
シーカーズベットの欠点
プロ集団に所属することになった僕は、
まずはそれを説明しましょう。例えば、
バンカー=1枚目「4」2枚目「?」
これは、
もちろん僕らもそうでした。ここのプレイヤーに大きく賭けます。
ところが、この「?」が「5」だった場合、負けてしまいます。
これが、僕らが唯一負ける時になるわけです。
シーカーズベットは完全に全てのカードが見えるわけではなく、
僕らは毎日のように店に現れ、明らかにおかしなベット(
このMAXの時だけ100発100中で勝ってしまうと、
裏カジノでは、ある日突然入口のオートロックが開かなくなる、
ところが、僕らは何回かに1回、
そういう意味では、負けてラッキーとも言えました。
プロ集団のルール
正直、シーカーズベットを使えばいくらでも勝てました。
どちらが勝つか分かっているわけですから、
しかし、僕らにはルールが存在していたのです。
これは、会長ケイが作ったルールなのですが、
「1日1軒あたり勝つ金額は1人5万円まで」
というものでした。
カジノは勝ち続ける客(プロ)を嫌いますので、
このルールを守らない者は、ケイから破門にされてしまいます。(
バカラ屋に来ているお客さんはほとんど顔馴染みばかりですので、
なので、もし5万円を超えてもっと勝ちたい場合は、バカラ屋を「
1軒あたり5万円なので、3軒はしごすれば15万円勝てます。
若い僕らにはこれでも十分な額でしたが。
もうひとつルールがありました。
「お店の常連やディーラーと仲良くしろ」
というものです。
要は揉め事を起こすなよ、ということですね。
ディーラーや黒服と揉めちゃうとあっさり出入禁止になりますから
そして、お店に来る常連客の中には「くじら」
くじらのワンベットは10~100万円。
僕らをつまみ出したことによってくじらが来てくれなくなったら、
あとは、シーカーズベットの内容を人に言わないとか、
とにかく僕らはそういうルールに従って、毎日勝ち続けてました。
ユウシとの出会い
僕の1日の行動パターンはほぼ同じでした。
昼頃起床→朝昼兼用メシ→16時集合→バカラ屋→バカラ屋→(
ほぼこの流れです。
バカラ屋は気分で選んでました。
ある日、いつものバカラ屋に行くと、その日は閑散としていて、
そのたった1人の客の顔も見たことがありました。しかし、
歳はH氏と同じぐらい(24~25)。
僕らが同じテーブルに着席すると、
そこで、H氏が彼に話しかけます。
「初めまして。いつも居はりますね。今日は(バカラの)
ラガーマンがそれに答えます。
「全然ダメですわ。ディーラーが強すぎて、もう150(万)
150万!たしかに彼はそう言いました。
そうなんです。この男、若いのに結構なハイローラーで、
そういえば、たまに200~
男の名は勇志(ユウシ)。じつは、
ユウシがどちらでもなく僕らに話しかけてきました。
「いつもココイチ勝ってますよね。
そりゃ当然ですよ!
と言えるわけもないので、
「いやもうただのヤケクソですよ。
と、ごまかしておきました。
卓内で会話をしてるうちに、
ユウシは僕らの勝つカラクリは全く分かっていませんが、
そのシューターを消化した時、
12目ぐらいのバンカーツラが下りて、
僕らもその日ここが3軒目だったので、
依然として客は僕らだけでしたので、
店を出ると、
「いやぁ良かったですわ。
「良かったらメシでも行きませんか?
とユウシが誘ってきます。
僕ら二人も「なぜ彼はこんなに若いのに金持ってるんだろ?」
そこで知ったのですが、
ところが、すぐ熱くなる性格が災いし、バカラでは連戦連敗。
それにしても日当30万円…。
やはり上には上がいることを思い知りました。
この時点でのユウシの印象は、気のいい恐い兄ちゃん、
H氏vsベル
毎日同じメンバーと同じような事を繰り返し、
この時の金の管理は杜撰なものです。
とりあえず昼に家を出る時に、財布に100万円、
ある日、いつものように、
そして、いつものバカラ屋に行き、いつもの黒服に挨拶、
僕とH氏は隣同士で座りますが、
ですが、メインではないもう一人にはまた別の仕事があって、
そして、次はプレイヤー(バンカー)だね、
これまで二人は一度も意見が食い違うことはなかったのですが、
勝負ベットのゲームが近づき、いよいよ次!という時のことです。
「スペードQ→ハートK→ダイヤ4→ダイヤ6。
と、H氏にしか聞こえないような小声で僕は聞きました。
僕が言ったのはカードが出てくる順番です。
カードはPBPBの順に配られますから、
プレイヤー=1枚目「Q」2枚目「4」
バンカー=1枚目「K」2枚目「6」
バンカー6条件発動でプレイヤーの3枚目が「8」
つまり、2-6でバンカー勝利!こういう意味です。
プレイヤー
バンカー
次に出てくるカード
しかし、H氏は眉間にシワを寄せながらこう答えました。
「違いますよ。Qの前に1枚噛んでますから、
僕がスペードのQから始まると言ったことに対し、
要約するとこうなります。
プレイヤー=1枚目「?」2枚目「K」
バンカー=1枚目「Q」2枚目「4」
次のカード「6」その次が「8」
プレイヤー
バンカー
次に出てくるカード 次の次カード
つまり「?」が8or9ならナチュラルでプレイヤーの勝利。
6or7ならプレイヤーはスタンディング。
また、1,2,3,10,J,Q,
そして「?」が4or5の時のみプレイヤーメイク0or1となり、
すなわち、13分の11でプレイヤーが勝つ(
さて困りました。一応僕らの中では、
僕の読みでは、バンカー必勝
H氏の読みでは、プレイヤー勝率85%
まるで正反対の結果になります。
しかし、僕はメインシーカーなわけですし、
万が一間違ってても、プレイヤーは必勝ではありません。
50%でバンカー必勝
50%でプレイヤー勝率85%
それなら、バンカーに賭けるべきではないのか?
僕は咄嗟にそう思いました。
しかし、そう長く迷っているわけにもいきません。
ベッティングタイムが終了に近付き、ディーラーがベットタイム終了を告知する呼び鈴に手を伸ばしたその刹那、慌てた
バンカーにオールインする僕
プレイヤーにオールインするH氏
えっ!?この瞬間、二人はきっと同じ表情をしていたと思います。
そして、これを見たディーラーがすかさず終了を告知しました。
「ノーモアベット!」
運命のカード
ディーラーが終了の合図をした以上、
勝負の行方はたった1枚、
プレイヤー、バンカー、プレイヤー、バンカー、
プレイヤーのベットオーナーであるH氏と、
問題は、プレイヤー側に最初に配られた1枚目のカードが何か。
裏返しにされた4枚のカードが並んだ瞬間、
「プレイヤーはオープンしてください」
と。
まあ、いつものことと言えばいつものことなのですが、
一瞬の間を置き、ディーラーが僕に聞いてきます。
「バンカーどうしますか?」
と。
カードは4枚ともまだ伏せられたままです。
僕は、言いました。
「バンカーの2枚目のカードだけください」
僕の予定では、
ていうか、ダイヤの6を確信していました。
ただ、なんとなく、僕を信じず反目に置いたH氏に少しイラっとしてたのだと思います。
席は隣。僕が絞れば隣のH氏にも丸見えになります。
この時点で、ゲームはいつもと違う状況になっていました。
僕は、ゆっくりと縦からカードを絞ります。
ダイヤの尖った部分が2つ見えました。
「足あり!」
白々しく僕は声を出しました。
そして、続けてカードを横に向けます。
スリーサイドなのは分かっています。
少しずつ少しずつカードをめくりながら、
メインシーカーを裏切るなんて、とんでもない。
僕を信じなかったことを後悔するといい。
そう思いながら、カードを横から開いていきました。
!?
「えっ…」
そこには、僕の予定と違うものが存在していました。
つ、ツーサイド?
一瞬の戸惑いの後、状況はすぐに飲み込めました。
カードの並びは、スペードQ→ハートK→ダイヤ4→ダイヤ6
僕が絞ったものはまさに、この「ダイヤの4」でした。
つまりこれはどういうことか?
そうなのです。存在していたのです。
Qの前に1枚…
H氏はその1枚の誤差を、サブに座りながらも、
僕が力なくダイヤの4を表返した時、
「もういいですか?」
「残り全部オープンしてください」
と、
これを受けてディーラー、並べられた全てのカードを開きます。
僕はもうカードがよく見えてませんでした。
あとは出来レースなのですから。
「プレイヤーメイク5、バンカーメイク4」
「4条件です。ワンモアプレイヤーカード、5からです」
いわゆる逆条件。4条件でプレイヤー5というのは、
しかし、今回は状況が違いました。
皆様はもうお分かりでしょうか?
そう。次のプレイヤーのカードは、僕がさっき絞り損ねた「
「あっ!」
このとき僕は喜びではなく、
僕が状況を飲み込むより少し早く、
「プレイヤーオープンでいいです」
そしてそのまま、バンカーの3枚目を見ることもなく、
「バンカーもオープンで!」
僕は強い口調でディーラーを急かしました。
6枚のカードがディーラーによって開かれ、
「バンカーメイク4。1-4でバンカーウィンです」
ナイスキャッチ!と渡されるチップを興味なさそうに回収し、
しかしここでまた問題発生。
僕はワンシューターもやってません。
つまり、換金してもらうことができません。
H氏はすでに店を出ていたので、僕は焦ってました。
「後で続きやりますんで、チップ預かっといてください!」
とキャッシャーにチップを預け、僕も慌てて店を出ることを選択。
オートロックが開かれ、1Fで止まっているエレベーターを呼び、
僕は、完全にH氏を見失っていました。
(つづく)